ベルリンの青い空 その5 ベルリンの壁と意思表示

ベルリンの青い空 その5
ベルリンの壁と意思表示

ベルリン二日目の朝は有名なイー
スト・サイド・ギャラリーに行くことか
ら始めました。
旧東ドイツが住民の流出を阻止す
るために市内を取り囲んで築いた
ベルリンの壁が川沿いに長く残っ
ています。
東ドイツ崩壊後、芸術家や素人も
思い思いに壁に絵を描きました。
やった者勝ちの世界ですが、出来
の良くないものは勝手に上描きさ
れました。
川に面した広い空間に壁が長く
直線で続き、思い思いに描かれた
絵を見ることができます。
正直言って、レベルが高いものは
そう多くはありませんが、この意思
の表示のストレートなエネルギー
には圧倒されます。
いくつかの主要なものには作者の
名前の入ったプレートがかかって
います。
また鉄のフェンスで守られている
ものもあります。
もうひとつの有名な公園、マウア(
壁)パークにも行ってみました。
残された壁沿いに長く広大な芝生
が続いています。
日曜には蚤の市が開かれ、大勢
の人でにぎわうといいます。
日曜にこれを見てから帰国するつ
もりだったのですが、飛行機の都
合で見ることができませんでした。
平日の午前中で見渡す限りの芝
生に数人しかいませんでしたが、
自転車の集団がやってきました。
20人ほどの中学生らしい若い人
たちに引率の先生が先導してい
ます。
授業として歴史を伝えているので
しょう。
楽しそうな中にも真剣な雰囲気が
伝わってきました。
「涙の宮殿」と名づけられた昔の
出国所にできた展示場にも行って
みました。
西から東へは行けましたが、東の
人は西へは行けず、生き別れの
家族はここで分かれなければなり
ません。
写真やトランク、持ち物が展示さ
れ、どんな思いで国をでたかが伝
わってきます。
当時の人たちの暮らしぶりや感情
が伝わって、胸をゆさぶります。
ドイツでは言葉で表現しなければ
何も考えていないものと判断され
ると、よく言われます。
融通が効かない、ルール重視の
国というイメージです。
けれどその内には、意思表示を
重んじ、意思が表明されたものは
必ず議論し、検討されるという暗黙
の了解があるようです。
ですから一度決まったルールは、
それが変わるまで重んじられるの
です。
建物のほとんどはきれいに手入れ
されていますが、まったく手付かず
のものもありました。
壁に「私たちはここに住む」と書い
てあります。
古いホテルを不法占拠した人たち
が暮らしているようです。
それでも強制退去にはならず話
し合いが続いているのでしょう。
意思と意思がぶつかりあい、ルー
ルが決まります。
栄光の時代も,全体主義の台頭
を許し個人の意思が押しつぶされ
た苦しい歴史も経てきたドイツ.
個の意思が尊重され,議論と検討
が続けられるということは,未来へ
の希望と光でもあるでしょう。
もちろんこうした風潮についていけ
ない人たちもいます。
大声で分けのわからないことをず
っとわめいている人、酔ってうつろ
な目で通行人を見る人、警官にと
り囲まれ議論している人などを見
かけました。
けれどそれもある意味の意思表示
でしょう。
日本人のように気づかいや優越感、
劣等感などの他人と比較した内的
な情緒ではなく、絶望の明確な表
明です.
どちらがいいのか私に判断はでき
ませんが、異なったものがそこにあ
るという実感を強く持ちました。