ベルリンの青い空 その13 日々の疲れ,旅の疲れ 中篇

ベルリンの青い空 その13
日々の疲れ,旅の疲れ 中篇

火曜日の空港での猛ダッシュの
疲れも金曜にはやっと少し痛み
が治まってきました.
土曜日にはもう一度シオン教会へ
いき,中に入って静かで澄んだ気
にふれることができました.
夜にふたつのコンサートがあり,
日曜の早朝には帰国です.
一度スペインに行き,ヨーロッパを
西から東に渡って日本に向かうの
で時間は余計にかかります.
到着は月曜の朝です.
昼には晴屋に到着し,顛末を大
雑把に報告して,さっそく配達に
出かけます.
私は自分の仕事をだれかに任せ
るのを好きではありません.
他の人がしたことが気にいらない
というのではなく,自分のために
誰かに犠牲を強いるという感覚が
自分で許せないのです.
決してやさしいのではなく,押し付
けがましいので,周囲にとっても
疲れる性格です.
次の日からはまたいつもの日常が
始まります.
ベルリンに行ってシオン教会に深
い感銘をうけたからいって、日常
の何かが変わるわけではありませ
ん。
日々の疲れに,旅の移動の疲れ
が重なり,いなかった間の残務整
理をし,働かない頭と動かない身
体と向き合いながら,時の経過を
待ちます.
そんな状態の中,胸の中に残る
イメージが消えないうちに,どうして
も文章にしないと気がすみません.
身体に残っている感覚を開放す
るのに,他の方法がないのです。
書かないと、腐って朽ち果てます。
睡眠時間を削り,空いている時間
をすべて使って,あいまいにうつ
ろう感覚に形を与えていきます.
およそ2週間で書き上げました.
1から11まで順に書いていきます
が,7の「シオン教会」だけは残し
ておきました.
とって置いて階段を登りつめた最
後の一段としました。
やっと一息ついて,周囲を見渡し
ます.
もう4月の中旬ですが,5月の末に
は店を手伝っている息子の洸の
一週間ほどのアメリカ行きが決ま
っています.
結衣がいない中,ただでさえロー
テーションが苦しいためにかなり
のハードスケジュールになりそう
です.
そして頭の中にあったのは5月の
連休中に予定していた店の改装
の計画です.
表の看板を変えたのがかなりの
好評で,その流れで店の棚を改
良しようというものです.
私は内装の仕事の経験があり,頭
の中に設計図を作って,完成させ
ればどういう効果があり,それには
どれだけの手間と時間がかかるか
おおよそ想像することができます.
新しい棚をふたつ作り,ふたつの
棚を改造します.
誰かに頼める仕事と私にしか出来
ないことを考えあわせ,相当のエ
ネルギーが必要で,私だけでなく
他のメンバーも疲れてしまうでしょ
う.
「今回延期しよう」と申し出ますが,
おカミの答えは「ダメ」です.
仕方なくイメージを絵にしたり,模
型を作ったりしますが,困難さは
ますばかりです.
スケジュールの過密さに根をあげ
て再度延期を申し入れますが,
お許しは出ません.
私は「ハウル」と名づけられた棚を
愛してもいました.
ゴタゴタと雑多なのに極めて合理
的でもあり,多くの機能がありなが
ら,暖かく豊かな雰囲気があります.
晴屋の象徴とも思ってきました.
これを換えるからには,それを越
すものでなければなりません.
そうでなければハウルに申し訳な
いのです.
連休までの2週間の間,今度は空
いてる時間をすべて棚作りに注ぎ
ました.
連休の4日間ではとても間にあわ
ないので,事前にいくつかの部分
を組み立てておき,塗装もすませ
ておいて,休みの間に店の中で
組み立てる計画です.
こういう仕事は基本部分より,細部
の仕上げに時間がかかります.
それを疎かにすると,結果は必ず
失敗します.
連休の初日,手伝いに来た洸が
いきなりハウルの解体をします.
あっという間にバラバラになりまし
た.
「自分じゃ、できないだろう」と言い
ます.
確かに私がやっていたら気持が
重くなって,それだけで疲れてい
たでしょう.
完成できなかったかもしれません.
最初の一日で基本構造は終わり,
残り3日で細部を仕上げました.
出来は非常によく,見やすく,明
るく,広くなったとお客さんたちに
も好評です.
しかし達成感はあっても、疲れは
身に確実に残ります.